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2015年12月23日 (水)

タネが危ない!野田勲氏講演会メモ録

2013年8月17日、アスティとくしまにて

ナカガワ・アドのあど畑事業部の主催で

野口種苗研究所の野口勲氏「タネが危ない(タネを守ることは、生命をまもること)」という講演会がありました。

以下、講演メモ録

111121野田種苗研究所の野田勲さんは、若い頃、虫プロ出版で手塚治虫社長担当となり「鉄腕アトム」「火の鳥」に関わり、虫プロ倒産後も編集プロとして働いていたが、30歳になったのを機に、家業の種苗店を継ぐ。

固定種しか扱わない種苗店で、インターネットでの通販ばかりなので、商店街に店舗を開いている必要がなくなり、種とり畑のある郊外に移った。会社の屋根には火の鳥、正面にはアトムが出迎えてくれる。

■おいしい固定種・農作業効率のよいF1種

131インターネット通販のラディシュボーヤが「いとめずらしき百選」という企画を立て、その選定委員になった。この時の1位があんのんいもで、これがきっかけであんのんいもが世に出た。その時の2位が三浦大根。三浦大根は生だと辛いが、煮ると酵素の働きで甘くなる。煮崩れしにくく、煮れば煮るほど甘くなる。味は一番であるが、現在の商流には向かない。大根は早いものなら3ヶ月で出荷できる。しかし、三浦大根は3ヶ月ではできない。他の大根と一緒に種まきしたら、三浦大根だけが畑に取り残される。そして大きさがそろわない。大きいものと小さいものができる。本来の野菜は、生き残るために生育がわざとずれるようになっている。そうすることで、環境の変化による全滅が避けられる。しかし、この特性は、間引き出しをしなければならないので、農家としては煩わしい仕事となる。また消費者にとっても、同じ1本でも、大きいのと小さいのがあるのは不公平で困る。昔の八百屋はみな量り売りであった。100gいくら、それは本来の野菜を扱っていたから。

1カ月余分に畑を用意しなくてはならないし、出荷時に大きさがそろわない。農家さんからは「つかいものにならない」と言われた。

江戸時代のスイカには縞模様がない。大和スイカというのがあるが、皮が軟らかいので、長距離輸送に適さない。カラスにつつかれやすい。明治になって皮の厚い縞のあるスイカが一般的になった。

在来種はそろいが悪い。では、なぜF1種はそろいがいいのか?それは細胞壁を厚く強くしてあるから、成長が早い。よってF1の大根の場合、おろしかねですりおろすと、おろしがねにスジが絡まる。またF1でない在来種・固定種は茎が柔らかくポキポキ折れてしまう。

141151_2金町コカブという固定種のカブの種をつくっていた。現在のカブはみなF1種になっている。それはやはり、いっせいにおおきくなり、いっせいに出荷できる。小カブでも中カブでも大きいカブでも皮が固いので形が崩れにくい。

上のそろっているのがF1種、下のバラバラなのが固定種、

掛け合わせるときは、遠く離れた系統のものと掛け合わせないと、両方の性質が強く出ない。ヘテローシスという。日本のカブと掛け合わされているのはヨーロッパのカブ。これは家畜のエサ用のものである。

欧米はキリスト教社会。食べものにも位があり、天にまします神に近い順に尊い。空中を飛ぶ鳥がいちばん、次が空中にある果物(木になるリンゴやブドウ)、そして地上にある野菜や獣、地下にできるカブや大根やイモ類は、神から遠く、悪魔の食べものとまでいわれることがある。ジャガイモが食べられはじめたのは宗教改革でプロテスタントが生まれた後のこと。

日本ではカブや大根の地位は高い。干したり、漬物にしたり、保存食にできるので、五穀に継いでカブ、大根は重要野菜であった。奈良時代から栽培が推奨されていた。

在来種・固定種のカブはほんとうにおいしい。しかし、F1のカブはまずい。それは種苗業者も知っているが、効率よく栽培できることが味よりも優先される。

■F1種のつくり方

161F1とは雑種第一世代のこと。母親と父親を畑で縞模様のように育て、開花時期がそろうようにすると父親の花粉で母親の株に種ができる。
F1をつくるためには、まずは純粋な片親をつくる。
アブラナ科は自分の花粉では受粉できない。自家不和合性という。近親交配を避ける仕組みと思われる。
しかし、アブラナ科でもつぼみの若い花は、自分の花粉を嫌がらない。その特性を活かして、つぼみの時に受粉させる。これを「つぼみ受粉技術」という。日本の種苗メーカーであるタキイが開発した。手先の器用な若い女性のパートさんをたくさん雇っての手作業なので、ハウスは新興住宅地の近くにあった。

野口さんも種苗屋として、F1種をてがける必要があると考え、いろいろ学んだが、たくさんの女性パートが手作業しているのを見て、これは大企業でないとできないとあきらめた。

現在の「つぼみ受粉」は、炭酸ガス濃度を、通常の0.036%から4%まで高めると、生理がくるって自分の花粉で受粉するようになる。受粉作業にはハチを使う。ハチはヘモグロビンを持った赤い血ではないので、高濃度の炭酸ガスの環境でも働ける。わずかな期間に液化炭酸ガスが40tも使用される。

■雄性不稔はミトコンドリア異常が原因

雄性不稔という技術。1929(昭和4)年、アメリカのカリフォルニア州の農業試験場でジョーンズさんは、赤タマネギの中に、花粉が出ない異常な花を持つ個体を発見する。この花粉ができ特徴は遺伝することがわかり、これを雌しべだけの仕事をする母親として利用することで、目的の花粉を受粉させることでF1種をつくることができる。1940年から使用されている。雄性不稔を使うことで雄しべを除去する作業が必要なくなり、効率は格段に上がった。

171雄性不稔はミトコンドリアの異常。ミトコンドリアは細胞の核のDNAとは別の、独自のDNAをもっている。しかし、それは母系遺伝しかしないことがわかっている。ミトコンドリアは酸素をつかって大きなエネルギーを得る、細胞の呼吸を司っている。人間の場合、ミトコンドリアの総量は体重の1割にもなる。図鑑などでは球形の細胞内小胞体として紹介されていることが多いが、実際は糸状の個体粒子(網目状に細胞の中に広がっている感じ)。

写真の白いところがミトコンドリア、黒い丸いところが細胞の核

母系遺伝する理由は、精子の活動エネルギーもミトコンドリアが司っているのだが、ミトコンドリアは酸素呼吸をするために活性酸素を発生させてしまう。この活性酸素はDNAを傷つける。精子のミトコンドリアDNAはマラソンを2回走るほどの激しい長旅で、傷ついていることがあるので、卵の中には入るのだが、真っ先に分解されて消えてしまう。以前は、精子のミトコンドリアはしっぽのところにあるので、卵にたどりついた精子のしっぽはいらないので、ポロリととれて落ちて、卵の中には入らないと考えられていたが、顕微鏡技術の発達で、中に入るが、その後、分解除去されてしまうということがわかった。卵子のミトコンドリアは100万個に対し、精子のミトコンドリアは100個。精子のミトコンドリアは

ミトコンドリアは外膜、内膜の二重膜構造になっているのだが、雄性不稔は内膜に特殊なタンパク質がとりつくことによって起きることがわかっている。

雄性不稔は花が小さく3分の1なので、3倍必要。玉ねぎの場合は種親3列に対し花粉親が1列必用。1911年、日系人が経営する玉ねぎの種とり圃場の記録がある。面積は200ha。これを現在の雄性不稔の玉ねぎの種とり圃場に置き換え、同じ収量をとるためには200×1.25(花粉親の面積)×3(雄性不稔は大きさが3分の1)=750haもいる。

雄性不稔、つまり花粉をつける雄シベがないはずなのに、雄シベが復活することがある。種苗業界では「しぶがでた」という。花粉をつくってしまうと別の種になってしまうので、不良品になってしまう。「しぶがでる」ことは核のDNAがミトコンドリアのDNAを治すことがあることを示している。

雄性不稔は遺伝するので、アブラナ科など各科でひと株の雄性不稔をみつけると、その科すべてに応用できる。

191181大根で雄性不稔がみつかると、アブラナ科すべてに導入できる。最終的にはキャベツが作りたいときは、戻し交配することで大根とキャベツのあいのこを限りなくキャベツに近づけることができるようになる。50:50→25:75→12.5:87.5と大根の遺伝子をもってはいるが、交配をくりかえすことで、その割合をかぎりなくすくなくできる。

日本では野菜の80%が雄性不稔になっている。キク科では長らく雄性不稔がみつからなかったが、最近見つかった。キク科レタスなどは花の形がミツバチの目をつくような形をしているので、ミツバチが寄り付かないという問題があった。種苗メーカーはハチではなくハエをつかうなどの技術を開発しているので、キク科も雄性不稔の種ができる。

■CCDは雄性不稔の畑で働かされているミツバチの精子の弱体化が原因か?

ここからは野口さんの個人的な私論という。

ハチが突然いなくなる蜂群崩壊症候群(CCD=Colony Collapse   Disorder)は、日本では「いないいない病」と呼ばれている。本来帰巣能力が高いミツバチが、巣箱に戻らず姿を消し、群れの縮小が崩壊いえるほどに、急激に進む。巣箱の周囲にハチの死骸がなく。まさに大量失踪といっていい。原因は分かっていない。2006年、2007年に全米50州中の27州とカナダの一部で報告され、養蜂業者が管理するハチ群の9割を失った。ハチがいなくなるとアルファルファ(牧草)、リンゴ、アーモンド、かんきつ類やタマネギ、ニンジンなどに大きな影響がある。

タマネギ・ニンジンとハチはどのような関係があるのか?このハチは種とり圃場で受粉のために働いているハチのことをいっている。10aあたり1箱、1箱あたり2~3万匹、ハチは2キロくらいの範囲で蜜を集める。

ハチの大量失踪の原因については、ネオニコチノイド系の農薬が犯人といわれているが、アメリカでもっとも被害が大きいことに注目すると、雄性不稔のタマネギとニンジンになんらかの原因があるのではないかと考える。

養蜂業者によるとハチの大量失踪は20年の周期があるといわれる。ネオニコチノイド系農薬の使用前からミツバチの大量失踪は起きていたことになる。

玉川大学では女王蜂に対する人工授精の研究をしている。ミツバチの雄が不妊症になっているからだという。これは人間の男性にもいえることで、精子の活動が弱まっている。

春から夏にかけて女王蜂が卵を産まないので、働き蜂は巣の未来に絶望して、巣をはなれてしまったのではないかというのが野口さんの仮説である。

そして雄ハチの不妊症の原因はミトコンドリア異常をもった雄性不稔の株の蜜を集めたからではないか?雄性不稔が大量にあるということは、通常は自然界ではありえない。

働き蜂と女王蜂は生まれたときは、同じただの雌バチである。女王蜂を女王蜂たらしめているのは、ロイヤルゼリーである。ロイヤルゼリーは若い働き蜂であるミツバチが花粉や蜂蜜を食べ、体内で分解・合成し、上顎と下顎の咽頭腺や大腮腺から分泌する物質である。女王蜂は一生、このロイヤルゼリーを食べ続ける。女王蜂にとってロイアルゼリーは唯一の栄養源であり、女王蜂はロイアルゼリーを食べることで、体の大きさは2~3倍になり、働き蜂の寿命が1カ月なのに対し、寿命は30~40倍の3年になる。そして毎日、1500個の卵を産む。

雄性不稔の株の蜜をつかって若い働き蜂の体内でつくられるロイヤルゼリーに何らかの異常がおこるのが、CCDの原因ではないか?

女王蜂が雄バチと交尾するのは3年の寿命の中でたった1回だけ、この一回の交尾で手にいれた精子で一生涯、生み続ける。

20年という周期は、生物濃縮にかかる潜伏期間と考えることもできる。

死骸が巣箱のまわりになく、突然いなくなる。季節は関係ない。

女王蜂はたった1回の交尾で手に入れた精子のストックでメスの働き蜂を生み続ける。未受精の卵からは雄ハチが生まれる。女王蜂の体内の精子が弱って、メスの働き蜂を産めなくなったら、働き蜂の寿命は1カ月なので、簡単に巣は崩壊してしまう。

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ここからは「なーがとあーわ」のつぶやき。

Photoフランス人の精子数は1989年~2005年の間で約1/3減少したとの研究発表があったという。1年に1.9%の割合で減少している。それでも35才平均の4990万~7360万/mlの正常範囲内にはある。男性不妊のしきい値は1500万である。過去20年間、精子の質の低下が議論されている。

人間にもみられる精子の減少、これが他の生物でも起こっていることは、まず間違いないだろう。

生命を人為的にいじることは、きっと取り返しつかいないことを引き起こす。
直し方がわからなのに、壊し続けることはやめないといけない。

「もし、地球の表面からミツバチが消え去ったら、人間は4年も生きてはいけないでしょう。どのようなミツバチも、どのような受粉も、どのような植物も、どのような動物も、どのような人も。」

この言葉はアルベルト・アインシュタインの発言として引用される。しかしアインシュタインのあらゆる文献を調べても、アインシュタインがこの言葉を発した確証はない。彼の死後39年たった1994年ころからささやきはじめられた都市伝説的なものらしい。

アインシュタインは世界の仕組みが知りたい。世界をつくった神の意志がしりたいと言っていた。便利だから、儲かるから、効率がいいから、スピードが速いから、そんな人間の都合だけで、元に戻らないほど、自然環境を大きく改変することは、罪なことだと思う。

わたしたちも大きな自然生態系の一部であるのだから、自然生態系を大きく改変してしまったら、自然のめぐみに生かされている人類も生きていけなくなる。

自分を生かしてくれている世界の仕組みを調べることは大事なことだが、そこから得た知識と技術を、人間の後先を考えない短絡的な利益追求の手段に使う前に、立ち止まってよく考えなくてはならない。

農業が変わらないと世界は変わらない。

食べものが変わらないと人間の心はかわらない。

逆に人間の心を動かす食べものがある。

それを生み出す農業がある。

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